「適応障害の原因がわからない」
「家族や仕事が原因になることがある?」
と悩んでいませんか。
適応障害では、仕事内容や人間関係の不和など、ストレスの原因が明確に存在するのが特徴です。本記事では、適応障害の原因をはじめとして下記を解説します。
- 具体的な原因
- 5つの症例と発症の原因
- なりやすい人の特徴
- 「体」「情緒面」「行動」の症状
- セルフチェック方法
症例をもとに解説しているため、適応障害の原因を具体的に知りたい方は参考にしてください。
目次
適応障害の原因
なんらかのストレスの原因が明確にあることが、適応障害の特徴です。
ストレスの種類は、仕事や学校、病気、家族関係などの個人レベルから、災害など社会を巻き込むレベルまでさまざまです。一般的に、以下のような環境の変化をきっかけに引き起こされることが多いです。
- 就職
- 転勤
- 出産
- 結婚
- 引っ越し
日本では適応障害が増加傾向で、特に職場不適応が原因であることが多いとされています。また、適応障害の発症はストレスを感じやすい人、感じにくい人などその人の性格にも左右されます。治療するには、まずストレスの原因を特定することが大切です。
社会生活で考えられる適応障害の具体的な原因
適応障害を引き起こすと考えられる具体的な原因は次のようなものが挙げられます。
・責任のある仕事による精神的なストレス
・同級生や同僚、上司などの人間関係の不和
・パワーハラスメントやセクシャルハラスメント
・子育ての負担や悩み
・引っ越しによる環境の変化
・経済的な不安
・失恋や離婚による人間関係の変化
・長期的な病気
・台風や地震などの災害
主に上記のような原因が、複雑に絡み合い適応障害が引き起こされると考えられています。
適応障害の5つの症例と発症の原因を紹介
適応障害の発症原因は人によって様々ありますが、この記事では5つほど事例をご紹介します。
- リーダーへの昇格と過重労働
- 上司からのパワーハラスメント
- 海外赴任による環境の変化
- 病気後の社会復帰に対するあせりや家族からの期待
- 義理の両親や妻による言葉の暴力
それぞれの症例と発症の原因の詳細を解説します。
1.リーダーへの昇格と過重労働
【人物】
会社員
【経過】
・会社員3年目に新規プロジェクトのリーダーとなる
・業務が難航し、1ヵ月の時間外労働が90〜120時間に及んでいた
→4ヵ月後に抑うつ(ゆううつ、落ち込んだ気持ち)や食欲の低下などが現れ、心療内科を受診したところ適応障害と診断される
この症例は、新事業の担当となった心理的負担や過重労働による心身の疲弊が、適応障害の原因となったと考えられます。
2.上司からのパワーハラスメント
【人物】
・40代男性
・既婚
・金融関係の会社員
【経過】
・真面目で家族のためにコツコツと働いてきた
・月80時間の残業をこなしていた時期に、職場で盗難事件が起きる
・いわれのない疑いをかけられ上司から「嘘をついているだろう」と強く責め立てられる
→その後、不眠や体のだるさ、集中力の低下、仕事への意欲低下が見られる。心療内科を受診したところ適応障害と診断された。
上記の症例は、長時間労働による心身の疲弊に加えて、上司からのパワーハラスメントが原因で適応障害が発症したと考えられます。
3.海外赴任による環境の変化
【人物】
・30代男性
・既婚
・会社員
・中間管理職
【経過】
・海外赴任を命じられ単身赴任となる
・幹部社員となり日本よりも責任が重く、性に合わない仕事をする日々
・帰宅も遅く土日も出勤で、仕事上の付き合いなどで休めるときがなかった
→妻を呼び寄せるも生活がうまくいかず帰国。妻の帰国後、寝つきの悪さや体調不良がみられるようになり、日本へ帰国後受診すると「環境の変化による適応障害」と診断された
参考:厚生労働省 海外赴任を契機に従業員と配偶者の両者にメンタルヘルス不調をもたらした事例
上記の症例は「住む場所や仕事内容の変化」「仕事の内容が合っていない」「相談できる人が近くにいない」などが適応障害の原因と考えられます。
4.病気後の社会復帰に対するあせりや家族からの期待
【人物】
・40代男性
・家族と自営業
【経過】
舌がんの治療後の良好な経過をたどっていた。
→退院後に仕事を再開し多忙な日々を過ごす中で、しかめた顔つきや不安、あせり、不眠、抑うつなどの症状が見られた。
参考:日本歯科心身医学会 舌癌術後に慢性適応障害(DSM-IV)を呈した一例
上記は、退院後の社会復帰中に発症した適応障害の症例。自営業であり仕事に対する家族からの期待、本人のあせり、多忙な日々などが重なったことが適応障害の原因となったと考えられます。
5.義理の両親や妻による言葉の暴力
【人物】
・70代男性
・息子と同居
【経過】
・適応障害により入退院を繰り返している
・同居していた義理の両親や妻から言葉の暴力を受けていた
・人との関わりが苦手であり、1人で過ごすことがほとんどである
参考:九州理学療法士・作業療法士合同学会 自宅に引きこもっている症例に対する精神科訪問看護での関わり
上記は「言葉の暴力」により、ストレスにさらされ続けたことに加えて「人に相談する」などのストレスの発散ができなかったことが、適応障害の原因と考えられます。
適応障害になりやすい人の特徴
適応障害の治療において、性格的な特徴または環境的な問題により、適応障害になりやすいかどうかを把握しておくことも大切です。
改善すべき点などが明確になり治療の助けとなるためです。ここでは、適応障害になりやすい人の特徴を解説します。
性格的な特徴
適応障害になりやすい人の特徴として次のような性格が挙げられます。
- 真面目で責任感が強い
- 心配性で完璧主義である
- ものごとに柔軟な対応ができない
- 周囲の人の機嫌を敏感に感じやすい
- 周囲の人に気を遣いすぎてしまう
- 環境の変化にストレスを感じやすい
- 休日にも仕事のことばかり考えてしまう
- 悩みを一人で抱え込んでしまう
その他にも挫折やトラブルを経験したことがない人は、適応障害を発症しやすいと考えられています。
環境的な問題
適応障害は、下記のように発症しやすくしてしまう環境があります。
- 悩みや相談をできる相手がいない
- 仕事の量が多く休むことができない
- 仕事内容が自分の性格や能力に合わない
- 職場や学校などの人間関係が良好ではない
- 自分の知識や経験を仕事に生かすことができていない
性格的な特徴や環境的な問題に当てはまるからといって、必ずしも適応障害になるわけではありません。
適応障害の症状
適応障害の症状は「体」「情緒面」「行動」に分けられます。それぞれの症状の詳細を解説します。
1.体の症状
体に現れる症状の例を紹介します。
- 手が震える
- 寝つきが悪いまたは眠れない
- 汗をかく
- 胸がドキドキする
- 肩がコリやすい
- 頭痛やめまいがする
- 食欲がわかない
- 便秘や下痢、腹痛がよく起きる
- 疲れやすく体がだるい
- 吐き気をもよおすときがある
上記の症状により仕事や学業に支障をきたしている場合は、適応障害の可能性があります。
2.情緒面の症状
情緒面に現れる症状には、次のようなものがあります。
- 不安を感じる
- 憂うつな気分が続く
- やる気が出ない
- 楽しいと感じられない
- 怒りっぽくなっている
- 焦ってしまうことが多い
- 判断力や思考力が低下している
仕事や学校が原因となっている場合は、出勤または登校しようとすると上記のような症状が強くなります。
3.行動の症状
行動の症状として起こりうるのは、次のようなものです。
- 人と会うのを避けてしまう
- 遅刻や無断欠勤がみられる
- 電話に出ることができない
- 揉め事を起こしてしまう
- 食事ができなくなる
- 暴飲暴食をしてしまう
「食べ過ぎ」や「食事をとらない」など症状が現れると、その他の健康に影響が及ぶこともあるため注意してください。
適応障害のセルフチェック方法
適応障害のセルフチェック方法をご紹介します。
- 勤務や登校の日はゆううつな気分や不安、緊張が強い
- 職場や学校に行くと手のふるえやめまい、冷や汗などの症状がみられる
- 休みの日はゆううつな気分が少しよくなり、趣味なども楽しめることがある
上記の様子が見られ日々の生活に支障をきたしている場合は、適応障害の可能性があります。一度精神科・心療内科の医師に相談してみましょう。
適応障害とうつ病の違い
適応障害と混同されやすい主な病気として、うつ病が挙げられます。適応障害との違いを把握しておきましょう。
- さまざまな精神疾患の前兆
- ストレスなどが原因で発症した深刻な精神疾患
それぞれの詳細を解説します。
1.さまざまな精神疾患の前兆
適応障害とは「自分が置かれている環境に上手く適応できず、それにより心身に症状が出てしまい、日常生活に支障が出ている状態」のこと。適応障害は病名というよりも原因・初期症状に近いです。うつ病だけでなく、さまざまな精神疾患の前兆でもあります。
適応障害は仕事や学校が原因となっている場合、出勤や登校をしようとすると症状が現れて、休みの日などには症状が消えることがあります。
症状が現れていないときは元気に見えるかもしれませんが「原因から離れると症状が消えることがある」という場合があります。「甘えている」「根性がない」などが原因ではないため、周囲の人は適応障害の人にかける言葉には注意が必要です。
2.ストレスなどが原因で発症した深刻な精神疾患
うつ病はストレスなどが原因で発症する精神疾患。うつ病は適応障害とは違い、基本的に波がないのが特徴です。なんらかの原因から離れて環境が変化したとしても、ゆううつな気持ちは解消されず、落ち込んだ気持ちが続き何をしても楽しい気持ちになれません。
- ゆううつな気分が続く
- 何事にも興味がわかない
- 食欲がない
- 眠れない
などの症状が、2週間以上継続して続く場合はうつ病を疑いましょう。
適応障害の診断基準
精神疾患の診察で用いられる場合がある「DSM-Ⅳ」を参考に、適応障害の診断基準を整理しました。
- 明確なストレスによって3ヵ月以内に症状が現れている
- 下記のいずれかのような重症な状態である
- 原因となるストレスから想像以上の苦痛を感じている
- 日常生活や仕事、学業などに大きな支障をきたしている
- 他の精神疾患によるものではない
- 大切な人を亡くした反応ではない
- 原因となるストレスから離れると症状は6ヵ月以上続かない
このような項目で心当たりがある方は医療機関に相談してみることをおすすめします。
適応障害の治療方法
適応障害の主な治療方法は下記の通りです。
・そのために原因を特定する必要がある
・仕事が原因の場合は「休職や転職をする」「部署異動をお願いする」など対策
※ 認知行動療法:自分の考え方や行動を修正する治療
・精神科医や心理療法士などにカウンセリングを受けながら、ストレスに対する受け止め方を修正する
・ただし、薬による治療は根本的な解決にはならない
どの治療法を選択すべきかは、医師が診察の上見極めます。治療法への不安や疑問点があれば医師に相談するようにしましょう。
まとめ
適応障害の原因は仕事や学校、家族関係などさまざまです。特定の原因に強いストレスを感じて、心身の不調に悩んでいる場合は適応障害の可能性があります。
適応障害の治療は、まず原因を特定することが大切。適応障害はうつ病の一歩手前ともいわれており、早期に適切な治療を受けることを推奨します。
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