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統合失調症の主な3つの原因|症状・経過・治療法も詳しく解説

統合失調症の主な3つの原因|症状・経過・治療法も詳しく解説

河田由美子

河田由美子

このコラムの監修医師

大垣宣敬

医療法人社団 紡潤会 理事長・新宿うるおいこころのクリニック 院長。杏林大学医学部卒。患者様中心の医療を心がけながら精神科・心療内科治療に関わっている。  

統合失調症は、幻覚や妄想などの症状で日常生活に大きな影響を及ぼしますが、原因はまだ完全に解明されていません。しかし、遺伝的要因や環境的要因、脳の機能不全が関係していることがわかっています。

本記事では、統合失調症の原因について、なぜ発症するのかを詳しく解説します。病気への理解を深め、適切な対応や治療を考える上でお役に立てれば幸いです。

統合失調症の主な3つの原因

統合失調症は複数の要因が重なり合って発症すると考えられていますが、個人によって発症リスクは異なります。

1.遺伝的要因

統合失調症には、遺伝的要因が関与していることがわかっています。家族に統合失調症の人がいる場合、発症リスクが高まることも明らかになっています。

例えば、Hilker et al. (2017)の研究では、一卵性双生児の発症一致率が33%、遺伝率は79%と推定されました。

(出典元:Hilker, R., Helenius, D., Fagerlund, B., Skytthe, A., Christensen, K., Werge, T., Nordentoft, M., & Glenthøj, B. (2017). Heritability of Schizophrenia and Schizophrenia Spectrum Based on the Nationwide Danish Twin Register. Biological Psychiatry, 83, 492-498.

ただし、環境要因や他の要因が影響を与えるため、遺伝的な要素があるからといって必ず発症するわけではありません。

2.環境的要因

環境的要因も、統合失調症の発症に関係しています。

リスクとなり得る要因
・出生前の環境や幼少期の経験
・母親が妊娠中にウイルス感染症にかかったり、栄養不足だった場合
・幼少期の強いストレスやトラウマ
・出生時の合併症
・出生時の低酸素状態

 

環境要因は脳の発達や機能に悪影響を及ぼす場合があり、遺伝的要因と組み合わさることで統合失調症の発症リスクが高まるとされています。

3.脳の機能不全

統合失調症は、脳機能の異常が関与していると考えられています。神経伝達物質であるドーパミンの過剰な活動は、幻覚や妄想といった陽性症状を引き起こす要因の一つです。

また、脳の前頭前野や海馬、その周辺の部位などで異常も報告されており、陰性症状や認知機能障害に関与している可能性があります。脳機能の異常は、遺伝や環境要因が複雑に絡み合って引き起こされると考えられています。

統合失調症とは

統合失調症とは
脳の機能に影響を与え、現実との認識に歪みをもたらす精神疾患

 

脳のさまざまな働きをまとめることが困難になり、幻覚や妄想などの症状が起こります。

国内における統合失調症の患者数は、約80万人と推定されています。また、世界各国で発行されている調査報告をまとめると、生涯のうちに統合失調症を発症する人は人口全体の0.7%と推計されていることから、決して珍しくない身近な病気といえるでしょう。

(出典元:厚生労働省「こころの病気を知る」

統合失調症の主な4つの症状

統合失調症の症状は、主に4つに大別されます。

1.陽性症状

陽性症状は、統合失調症の急性期には、顕著に現れる症状です。具体的には、以下が挙げられます。

  • 幻覚
    …実際に存在しないものを見たり、聞いたりする。声が聞こえる幻聴が一般的
  • 妄想
    …根拠のない信念を強く持ち、他者に説得されても考えを変えない

幻聴は、自分を責めるような声や命令される声が聞こえることが多いです。妄想は「誰かに監視されている」「特別な力を持っている」といった内容が典型的です。

陽性症状は、周囲の人からもわかりやすいため、統合失調症の診断がつく際の重要な要素になります。

2.陰性症状

陰性症状は、感情表現が乏しくなったり、 意欲が低下するのが特徴です。主な陰性症状として、以下が挙げられます。

  • 感情の平坦化
    …喜怒哀楽が乏しくなり、表情や声のトーンが変わらない状態が続く
  • 意欲の欠如
    …何事にも興味を持てず意欲が低下し、日常生活の活動を放棄して引きこもりがちになる
  • 社会的孤立
    …人間関係を避け他者と交流することが困難になるため、社会生活から遠ざかる傾向がある

陰性症状は治療が難しく、長期にわたるサポートが必要です。また、家族や周囲の人にとっては陽性症状よりも理解しにくく、気付きにくいことが多いといえるでしょう。

3.思考障害や奇異な行動(解体症状)

統合失調症では思考過程に障害が生じるため、会話や行動が支離滅裂になることがあります。

  • 思考の混乱
    …話す内容が論理的に一貫していない場合が多く、会話が飛躍的でまとまりがなくなる
  • 奇異な行動
    …奇妙な動作を繰り返したり、不適切な行動を取ったりする

例えば、突然話題が変わったり、無意味な行動を繰り返したりすることがあります。思考障害は認知機能に影響を及ぼすため、社会的な適応が難しくなる要因の一つです。

4.認知障害

統合失調症では、認知機能が低下することがあります。具体的には、以下のとおりです。

  • 記憶力の低下
    …物事を憶えていく能力が低下する
  • 注意力・集中力の低下
    …仕事や家事、勉強などの特定の対象に集中することが難しくなる
  • 情報処理能力・遂行機能の低下
    …仕事や家事の手順などがわからなくなり、遂行できない

認知障害は、社会生活や職業生活への影響が大きいため、患者様の回復プロセスにおいて重要な課題といえます。

自分の症状が統合失調症ではないかと不安に感じている場合、まずは医療機関を受診し専門医に相談してみましょう。

 

統合失調症の経過

統合失調症は、前兆期、急性期、回復期、安定期・慢性期という段階を経て進行します。経過には個人差がありますが、段階に応じた適切な治療と支援が重要です。

1.前兆期

前兆期の特徴
不眠や不安、神経過敏、身体症状などが出現することがある

 

患者様や家族にとっては統合失調症の兆候であるとは認識しにくいケースもあるため、軽度のストレスや日常の問題と見なされがちです。

しかし、前兆期に適切な対応を行うことで、急性期への移行を防げる可能性があります。症状を悪化させないためには、過労や睡眠不足に注意が必要です。

2.急性期

急性期の特徴
幻聴や妄想などの陽性症状が顕著になる

 

周囲から見るとおかしな行為をしたり、行動が予測不可能になったりする場合もあるでしょう。

入院が必要なケースも多く、抗精神病薬などの治療が必要です。患者様の生活や社会的な機能に深刻な影響を及ぼす時期でもあり、睡眠や休息が大切です。

3.回復期

回復期の特徴
急性期の治療が進むと、徐々に回復へ進む
(病状が安定しはじめた発症・術後から1~2ヶ月後の状態)

 

陽性症状が軽減し、現実とのつながりが回復しますが、意欲の低下や感情の平坦化などの陰性症状が残ることが多いです。

回復期では、薬物療法に加え心理療法や生活技能訓練が重要です。回復期リハビリテーションは、社会復帰を支援するための基盤となります。

4.安定期・慢性期

安定期・慢性期の特徴
急性期、回復期を経て症状が安定した後、在宅で安定した日常生活を送れるようになる

 

ただし、陰性症状や認知機能障害が続くことがあり、社会的な孤立や再発のリスクも伴います。

定期的なフォローや再発予防のための治療が重要です。再発の兆候を見逃さず、適切に対応できるよう家族や医療チームとの連携が欠かせません。

統合失調症の治療

統合失調症の治療は、主に薬物療法、精神療法、リハビリテーションの3つを中心に行われます。統合失調症は慢性化することが多いため、長期的な視点に立った治療計画と支援が必要です。

1.薬物療法

統合失調症の治療の基本は、薬物療法です。主に使用される抗精神病薬は、ドーパミンD2受容体に作用し、脳内の過剰なドーパミン神経の活動を抑制することで症状を改善します。

抗精神病薬には、定型抗精神病薬(従来型の薬)と非定型抗精神病薬(新しい薬)に大別されます。非定型抗精神病薬は、陰性症状や認知機能にも効果が期待され、副作用も比較的軽いとされている薬です。

※必ずしも軽微な副作用のみが現れるわけではありません。

主な副作用として、以下が挙げられます。

  • 精神神経系症状:眠気、不眠、めまい、不安、頭痛など
  • 錐体外路症状:ふるえ、アカシジア(体や足を動かしたくなるなど)、ジストニア(筋緊張異常)、歩行障害など
  • 高血糖
  • 無顆粒球症
  • 悪性症候群
  • 体重増加

長期間にわたる服薬が必要となるため、患者様が自己判断で薬を中断しないよう医療者との信頼関係を築くことも重要です。長期作用型注射剤(デポ剤)も開発され、服薬管理が難しい患者様に対しても有効な選択肢となっています。

2.精神療法

精神療法は、統合失調症の治療において薬物療法を補完する重要な治療です。中でも認知行動療法は、不合理な思考や誤解を修正し、現実的な考え方や行動に変えていくことを目的とした精神療法の一つです。

認知行動療法は、主に以下のような流れで行われます。

  • 自己観察
    …症状と環境の問題を把握する
  • 思考の再評価
    …幻覚や妄想を現実的に捉える
  • 行動実験
    …実生活での体験を通して認識を改善する
  • リラクゼーション
    …深呼吸などでストレスを軽減する

(出典元:統合失調症の認知行動療法:エビデンス、認知モデル、実践

福岡天神メンタルクリニックでは、公認心理師や臨床心理士などの専門家がカウンセリングを通して認知行動療法を実施しています。ご希望の方は、以下のボタンをクリックしご相談ください。

 

3.リハビリテーション

統合失調症は、急性期を脱した後でも社会復帰や日常生活の回復が大きな課題です。リハビリテーションによって患者様が日常生活を送るために必要なスキルを身に付け、社会的な孤立を防ぎます。

主なリハビリテーションは、以下のとおりです。

  • 生活技能訓練(SST)
    …コミュニケーション能力や問題解決能力を向上させるためのプログラム
  • 作業療法
    …作業療法士の指導のもと、運動、手芸、書道などを通して集中力を高め、達成感や楽しみを得ることで日常生活への適応を促す
  • デイケア
    …精神科病院などで実施される外来治療の1つで、さまざまなプログラムを通して社会的スキルの向上を目指す

生活技能訓練では、他者との会話やストレスへの対処法などを練習します。

また、デイケアでは、日中の一定時間をレクリエーションや集団活動などを通して、孤立せず安定した日常生活を送るための環境を提供します。

統合失調症の人に対してしてはいけないこと

統合失調症の人に対しては、症状を悪化させるリスクがあるため、接し方には注意が必要です。

1.現実を無理に押し付けない

患者様が幻覚や妄想を経験しているとき、現実ではないと指摘しても納得することはほぼありません。無理に現実を押し付けると患者様にとってストレスになり、症状を悪化させる恐れがあります。

また、妄想や幻覚を否定されると、患者様は混乱や孤立感を感じます。穏やかな態度で話を聞きながら、安心感を与えることが大切です。

2.感情的に反応しない

統合失調症の患者様は、症状により予測できない言動をとることがあります。周囲が感情的に反応すると患者様の不安や緊張が高まり、さらに混乱を招く場合もあるでしょう。

怒りや強い感情をぶつけることは避けてください。冷静で落ち着いた態度で対応し、患者様の感情や言動に振り回されないことが重要です。

3.批判や指摘を避ける

過度な批判や指摘も避けましょう。患者様は陰性症状により無気力や感情表現の乏しさを経験していることが多く、不安を感じている場合があるからです。

批判的な言葉は自尊心を傷つけ、回復の妨げになるリスクがあります。小さな進歩やポジティブな行動を認め、肯定的にフィードバックしてみてください。

ベオグラードの都市部住民を対象に実施された研究結果によると、家族が批判的または感情的に過度な関与をすると、再発率が10倍に増加することが示されました。批判や過度な感情的な反応が、再発の主なリスク要因になるとされています。

(出典元:Ivanović, M., Vuletić, Z., & Bebbington, P. (1994). Expressed emotion in the families of patients with schizophrenia and its influence on the course of illness. Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology, 29(2), 61-65.

統合失調症に関するよくある質問

ここでは、統合失調症に関するよくある質問への回答をまとめました。

Q:統合失調症になりやすいのはどんな人ですか?

A:統合失調症は、遺伝的要因の他、ストレスや環境といった複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。家族に統合失調症の人がいる場合、発症リスクが高まることがありますが、必ず発症するわけではありません。

また、幼少期のトラウマや強いストレス、社会的孤立などもリスク要因です。ただし、発症するかどうかには個人差があります。

Q:統合失調症は完治しますか?

A:統合失調症は完全に治る病気ではなく、症状をコントロールしながら生活することを目指します。適切な治療により症状を抑えられるため、安定した生活を送れるようになる方は多いです。

ただし、再発のリスクがあるため、早期治療や継続的なケアを受ける必要があります。

Q:薬は一生飲み続けなければいけませんか?

A:統合失調症の薬物療法は、長期にわたることが一般的です。多くの場合は症状が安定しても再発を防ぐために服用を継続します。

ただし、症状の安定が長期間続けば、医師と相談の上で薬の量を減らしたり中断を検討したりすることもあります。自己判断で薬を中断せず、医師としっかりと相談しながら治療を進めることが重要です。

まとめ

統合失調症は、遺伝的要因や環境的要因、脳の機能不全が複雑に絡み合って発症すると考えられています。症状には個人差があり、早期発見と適切な治療が重要です。

福岡天神メンタルクリニックでは、患者様一人ひとりに寄り添い、専門的な診断と治療を行っています。もし統合失調症の症状や対応について不安がある方は、当院にご相談ください。

 

このコラムを執筆した人
河田由美子

看護師として心療内科・精神科病院に10年間勤務。メンタルケアやストレスマネジメントの知識と経験が豊富。薬機法・医療法(YMAA)・景品表示法・特定商取引法(KTAA)認証資格を保有しており、法的知見を活かした医療ライティングが強み。科学的根拠に基づいた正しくわかりやすい執筆により、信頼性の高い記事作成を心がけている。SEO対策や医療広告ガイドラインを遵守した執筆実績も多数。

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