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全般性不安障害の症状とは?自力でできる治し方や病院での治療法を解説

全般性不安障害の症状とは?自力でできる治し方や病院での治療法を解説

高橋彩夏

高橋彩夏

このコラムの監修医師

大垣宣敬

医療法人社団 紡潤会 理事長・新宿うるおいこころのクリニック 院長。杏林大学医学部卒。患者様中心の医療を心がけながら精神科・心療内科治療に関わっている。  

誰しも仕事や家庭などで一時的に不安を感じることはあります。しかし、漠然とした不安感や心配が長い間続いていて、精神的・身体的に症状が現れている場合、全般性不安障害かもしれません。

今回は、全般性不安障害の症状や自力でできる治し方、病院での治療法などを紹介します。

全般性不安障害とは?

全般性不安障害(GAD)は不安障害の1つで、漠然とした不安感や心配が半年以上持続し、精神的・身体的な症状が現れている精神疾患です。不安や心配を抱く対象は特定の出来事ではなく、日常生活のさまざまな出来事に対して起こります。

不安感や心配の例は、次のようなものが挙げられます。

  • 仕事も貯金もあるけれど、急に無一文になってしまうかもしれない
  • 大地震が来たらどうしよう
  • 自分や家族が不幸に見舞われるかもしれない
  • 重大な事件や事故に巻き込まれるのではないか

こうした漠然とした全体的な不安は「浮動性不安」と呼ばれ、全般性不安障害の症状の特徴です。

ほかの人は危険ではないと感じる状況でも強い恐怖心を抱き、心配が募るあまり気持ちをコントロールできず、普段の生活に支障をきたしてしまう場合、全般性不安障害が疑われます。

全般性不安障害の好発年齢は30歳前後ですが、中年期以降など幅広い年齢層で発症する病気です。女性は生理的な要因などから男性よりもストレスを感じることが多いため、男性よりも約2倍発症リスクが高いといわれています。

全般性不安障害の原因

全般性不安障害の原因は明確にはなっていませんが、環境要因や遺伝的要因などが関わっているとされています。ここからは、それぞれの原因について詳しくみていきましょう。

環境的要因

全般性不安障害には、幼い頃にショッキングな出来事に見舞われたり、親から過保護な扱いを受けたりした経験が関連している可能性があると言われています。

もともと神経質で不安をもちやすい性格の人に多くみられ、引っ越しや転勤、離婚などの仕事や家庭上のストレスなど、精神的なものが原因で起こる症状や疾患とされますが、全く症状が見られない場合や周囲が気づかない程度のわずかな場合もあります。

遺伝的要因

家族や近親者が全般性不安障害やほかの不安障害を抱えている場合、不安障害を発症する可能性は通常の4~6倍大きくなります。

不安障害における遺伝子の役割は重要であり、不安障害と診断された方の30~67%に遺伝性が認められているという研究報告もあります。

また遺伝子の異常によって、セロトニンやノルアドレナリン神経のバランスが崩れることで、全般性不安障害を引き起こすことがあります。

全般性不安障害の症状に悩みやすい人の特徴

全般性不安障害になりやすい人の特徴は、次のようなものが挙げられます。

  • 完璧主義
  • 神経質で不安を抱きやすい
  • 自分に自信が持てない
  • 人に合わせてしまう
  • 心配性
  • 衝動的
  • ストレス耐性が弱い
  • 安心や安全に固執する

こうした性格や気質をもつ人に、ショックを受ける出来事や心配事、ストレスが降りかかることで、全般性不安障害になる可能性が高くなるといわれています。

全般性不安障害の主な症状

全般性不安障害では、漠然と湧いてくる不安や心配をうまくコントロールできず、心身に大きな負担をかけるため、さまざまな精神的・身体的症状が現れます。

症状が進むと、日常生活や仕事などに悪影響をおよぼすだけでなく、自ら命を絶つ危険性もあるので注意が必要です。ここからは、全般性不安障害の方が悩む症状を詳しくみていきましょう。

精神的症状

全般性不安障害は日頃から強い不安や心配を慢性的に持ち続ける状態です。多くの場合は6ヶ月以上持続するため、さまざまな精神的な症状が現れることも。

精神的症状の例
・些細なことで強い不安を抱く
・注意力が散漫である
・記憶力が低下していると感じる
・焦燥感が消えない
・イライラや怒りを感じる
・悲観的で、人に合うのが億劫だと感じる
・小さなことが気になってしまう
・根気が続かない

 

こういった症状に悩まされ、ときには生活に支障が出ることもあります。

身体的症状

強い不安や心配が自律神経に悪影響をおよぼし、身体にもさまざまな症状が現れます。

身体的症状の例
・頭痛や頭が重い感じが続く
・筋肉が緊張し、肩こりや首こりを感じる
・体が震える、動悸がする
・冷や汗が出る
・めまいがする
・呼吸がしづらい
・頻尿や下痢に悩まされる
・休息をとっているのに疲れやすい
・寝つきが悪い、夜間に目が覚めてしまう

 

これらの症状によってつらい思いをしている方は、福岡天神メンタルクリニックでご相談ください。

 

全般性不安障害のセルフチェックポイント

全般性不安障害かどうか疑っている方は、以下に挙げる項目に当てはまるかセルフチェックをしてみましょう。

  • 仕事や健康、家族のことなど複数の出来事や存在について、過剰な不安や心配がつきまとう
  • 半年以上ほぼ毎日強い不安感や心配を抱いている
  • 不安感や心配があるため、日常生活に悪影響が出ている
  • 緊張が続き、落ち着きがない
  • 筋肉が緊張しており、肩こりや首こりに悩まされている
  • 不安や心配が強く、物事をおこなうための準備に多くの時間が必要
  • 激しい不安や心配が湧き上がる物や出来事を極端に避けてしまう
  • 心配がつきまとうため、予定を先延ばしにしてしまうことがある
  • 安心感や安全を強く望んでいる

1つでも当てはまる場合は、専門家に相談するのをおすすめします。

全般性不安障害とうつ病・パニック障害の症状の違い

日常生活に支障をきたす精神疾患の代表例には、うつ病やパニック障害が挙げられます。ここからは、全般性不安障害とうつ病・パニック障害の違いについてみていきましょう。

うつ病との違い

うつ病とは
気分が落ち込んだり何事にも興味をもてなくなったりして、日常生活に支障をきたす病気

 

対して全般性不安障害では、強い不安や恐怖、身体症状(頭痛、めまい、吐き気、胃痛など)が主な訴えのため、うつ病と症状が異なります。

しかし、全般性不安障害とうつ病を併発するケースはとても多いことを押さえておきましょう。

パニック障害との違い

パニック障害とは
突然理由もなく激しい不安に襲われて、動悸やめまい、呼吸困難などが現れる「パニック発作」が繰り返し起こる精神疾患

 

全般性不安障害もパニック障害も、同じく不安障害に分類されます。

全般性不安障害は、日常生活の中で漠然とした不安や心配が慢性的に持続する病気です。不安の程度が過剰で、本人が思うようにコントロールできません。一方、パニック障害は不安や恐怖が数分内にピークに達する特徴があります。

全般性不安障害の診断方法

全般性不安障害の診断は、ICD-10とDSM-5という診断基準にしたがっておこなわれます。症状や経過の特徴から診断されるもので、検査では特に異常がみられません。

自分の症状が、全般性不安障害の診断基準に当てはまるか客観的に確認するには、精神科や心療内科を受診しましょう。セルフチェックと合わせて確認してくださいね。

ICD-10

ICD-10の診断基準は、以下のとおりです。ICD-10は世界保健機関(WHO)が作成した国際的な疾病分類システムの一部です。

ICD-10の診断基準では、少なくとも数週間、通常は数ヶ月連続してほぼ毎日、不安の症状が示されているか確認します。それらの症状は、これから示す要素を含んでいることが必要です。

  • 心配
    (将来に不幸が起こるのではないかという気がかり、イライラ感、集中困難)
  • そわそわした落ち着きのなさや緊張性頭痛、身震いなどの「運動性緊張」
  • 頭のふらつきや発汗、呼吸が荒くなるなどの「自律神経性過活動」

また、うつ病や恐怖性不安障害、パニック障害、強迫性障害の診断基準を完全に満たさないことが必要です。

DSM-5

DSM-5の診断基準は、以下のとおりです。DSM-5は、アメリカ精神医学会が作成した診断基準で、研究や臨床の現場で広く使用されています。 特に詳細な診断基準と具体的な症状の記述に重点が置かれているのが特徴です。

・仕事や学業などの活動やさまざまな出来事について、抑えるのが難しいと感じる強い不安感や心配が少なくとも6ヶ月以上続いている状態。
・また、以下の症状のうち3つ以上をともなっている(過去6ヶ月間、症状がある日がない日よりも多い)
【チェックポイント】
・落ち着きがない、緊張感、神経の高ぶり
・疲れやすい
・集中力が続かない
・すぐに怒ってしまう
・筋肉が緊張してしまう
・睡眠障害(入眠困難、熟睡できないなど)がある

 

不安感や心配、身体症状が臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている

 

その障害は、乱用薬物、医薬品などの物質または他の病気によるものではない

 

その障害は他の精神疾患ではうまく説明されない

 

自力でできる全般性不安障害の症状の治し方

強い不安感や心配を抱いても「自分が考えすぎているだけかもしれない」「病院で治療するのは大げさだ」と考えて、精神科や心療内科の受診をためらう方も多いのではないでしょうか。

ここからは、自力でできる全般性不安障害との向き合い方を解説します。ただし、症状が緩和しない場合は、無理をせずに精神科・心療内科を受診してください。

1.腹式呼吸をおこなう

腹式呼吸は、副交感神経の働きを優位にして、身体の過度な緊張状態を緩めるため、全般性不安障害の症状緩和が期待できます。

腹式呼吸のやり方
①背筋を伸ばして鼻から息を吸い込む
②丹田(おへその下)に空気を溜めるようにお腹を膨らませる
③吸うときの倍の時間をかけて、お腹をへこませながら息を吐く
④10~20回を目安に続ける

 

息を吐くときに緊張や疲れ、不安感、心配が自分の中から吐き出されるのをイメージすると効果的です。その日の体調をみながら、無理なく続けられるペースを見つけましょう。

2.規則正しい生活を心がける

心身ともに健康を取り戻すには、規則正しい生活を心がけることが大切です。

  • 毎日決まった時間に食事をとる
  • 早寝早起きを心がけて、朝日を浴びる
  • 十分な睡眠時間を確保する
  • 適度に運動する

生活リズムが安定すれば、自律神経が安定しやすくなるため、症状の緩和が期待できます。また、適度な運動にはセロトニンの作用を促進する効果が期待でき、気持ちが落ち着きやすくなるでしょう。

3.筋肉の緊張を緩めてリラックスする

全般性不安障害に悩む患者さまは、無意識のうちに身体が緊張していることが多いです。身体の一部に意識的に力を入れて、直後に力を抜く動作をおこなう漸進的筋弛緩法(ぜんしんてききんしかんほう)をおこなうと、リラックスする状態を身につけられます。

漸進的筋弛緩法のやり方
①身体の一部分に意識的に力を入れ、5秒キープする
②すとんと力を抜き、10秒リラックスした状態を味わう

 

力を抜いたときには、力を入れていた部分がジワっと緩み、温かくなるのを感じるでしょう。力を入れているときと抜いたときの感覚の違いを味わってみてください。漸進的筋弛緩法は、手や腕、肩、首、顔などさまざまな部位でおこなえます。

4.カフェインやアルコールの摂取を控える

カフェインやアルコールの摂取は交感神経を優位にし、自律神経の乱れを引き起こします。自律神経のバランスが崩れると、精神的にも不安定になりやすいため、カフェインやアルコールの摂取量を控えましょう。

また、カフェインやアルコールは寝つけない理由にもなるため、夜に摂取することは控えてくださいね。

5.働き方を見直す

勤務時間や勤務形態を見直すことで、全般性不安障害の症状が緩和することがあります。上司に相談し、働きやすい環境の構築に協力してもらうとよいでしょう。

もし働き方を見直しても症状の改善がみられない場合は、無理をせずに休養をとることも大切です。

自力では楽にならない全般性不安障害の治療法

自力での治し方を試しても症状が改善しない場合や、不安や心配が強く、心身ともにつらい思いをしている場合は、精神科や心療内科での治療をおすすめします。

全般性不安障害の経過は慢性的なもので、よくなったり悪くなったりをくり返しながら、何年も症状が続くもの。「我慢すれば何とかなる」と考えるのではなく、病気だと受け止めて治療を続けるのが大切です。

ここからは、病院でおこなわれる全般性不安障害の治療法をみていきましょう。

薬物療法

全般性不安障害に対する薬物療法では、症状に応じて抗うつ薬や抗不安薬が用いられます。

第一選択薬は、SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)という抗うつ薬です。即効性はなく、有効量を服用し始めてから効果が出るまで2週間~3週間かかります。しかし、効果が出始めると持続的に症状を和らげることが期待でき、依存性も低い薬です。

急性の不安感や不眠などの症状には、速やかな効果が期待できるベンゾジアゼピン抗不安薬が用いられます。

認知行動療法(CBT)

認知行動療法とは
ものの受け取り方や考え方(認知)に働きかけて、楽な気持ちに導く精神療法の1つ

 

ストレスなどで固まって狭まった思考(認知の歪み)や行動を治療者と患者さまが一緒に確認し、患者さま自身がより現実的で幅広いとらえ方を選択できるように導き、極端な不安や落ち込みを軽くしていきます。

TMS療法(磁気刺激治療)

TMS療法とは
専用の医療機器で脳にくり返し磁気刺激を与え、脳の活動を変化させる治療法

 

うつ症状を改善する効果が高いことが明らかにされています。

福岡天神メンタルクリニックでは、患者さまの状態に合わせてTMS療法を選択することもあります。

効果や料金については、関連記事「TMS治療」で詳しく解説していますので、ぜひご参考ください。

全般性不安障害の症状に悩む人をサポートする方法

全般性不安障害を改善していくには、周りの人の協力が必要不可欠です。しかし、どのように接すればよいのか迷うこともあるでしょう。ここからは、全般性不安障害の人をサポートする方法について解説します。

気持ちや性格の問題だと決めつけない

全般性不安障害の人と接するときは、苦しんでいる症状が本人の気持ちや性格の問題だと決めつけないことが大切です。相談を受けたときは、本人が心身ともに不調に苦しんでいることを理解しましょう。

否定的な言葉を使わず、うまくいかないことがあっても責めないであげてください。信頼できる人間関係を築くと、患者は「守られている」と感じて安心できるでしょう。

患者の不安に巻き込まれない

患者さまの不安が強まると、自暴自棄な態度や通院をやめようとする考えをみせるかもしれません。その際は、不安に巻き込まれないで客観視することが大切です。

これまで治療を続けてきたことに対して肯定的な声かけをしたり、患者さまのつらい気持ちをゆっくり聞いてみたりするなど、見守る姿勢をもちましょう。

まとめ

全般性不安障害(GAD)は不安障害の1つで、漠然とした不安感や心配が半年以上持続し、心身ともにさまざまな症状が現れます。うつ病やパニック障害との症状に違いはあれど、併発するケースも多いため、注意が必要です。

自力でできる対処法をおこなうとともに、精神科・心療内科で信頼できる医師やカウンセラーのもと治療をおこなうのをおすすめします。

福岡天神メンタルクリニックでは、精神科医や国家資格を保有する公認心理師が、患者さん一人ひとりの悩みに寄り添って適切な治療にあたっているため、ぜひ一度ご相談ください。

 

このコラムを執筆した人
高橋彩夏

薬剤師ライター。大学卒業後、大学病院薬剤部に就職。その後調剤薬局に転職し、婦人科や精神科・心療内科、糖尿病内科、腎臓内科の門前で勤務。「関わる人の生活の質を上げる」をモットーに、現在は薬局薬剤師として勤務しつつ、医療系メディアを中心に活動中。女性の健康や精神科・心療内科に関する執筆を得意とする。

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