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強迫神経症の原因とは?なりやすい人やセルフチェック方法を解説

強迫神経症の原因とは?なりやすい人やセルフチェック方法を解説

吉沢仁

吉沢仁

このコラムの監修医師

大垣宣敬

医療法人社団 紡潤会 理事長・新宿うるおいこころのクリニック 院長。杏林大学医学部卒。患者様中心の医療を心がけながら精神科・心療内科治療に関わっている。  

「家の鍵やガスの元栓を閉めたか気になってしょうがない」
「何度手を洗っても手が汚れている気がする」

と悩んでいませんか?これらの行為を人に相談するのは恥ずかしいと思い、一人で抱え込んでいる方もいるでしょう。

本記事では、強迫神経症(きょうはくしんけいしょう)の原因をはじめとして、以下の内容を解説します。

  • なりやすい人の特徴
  • 発症が多い年齢
  • 症状
  • セルフチェック方法
  • 治療方法

原因を理解することは、強迫的な考えや行為を修正するのに役立つため、参考にしてください。

強迫神経症(強迫性障害)とは?

強迫神経症とは?
「鍵を閉め忘れたかもしれない」「手が汚れている」などの考えが繰り返し頭に浮かび、手を洗う行為や戸締りの確認などを何度もする病気

 

学業や仕事など日々の生活に支障をきたしている場合は、強迫神経症の可能性があります。

強迫神経症は100人に2〜3人が経験する身近な病気です。思春期後半から成人期前半に発症しやすいといわれています。原因は明確に解明されておらず、脳内の神経伝達物質(脳の働きを調整する物質)の乱れや遺伝、生育環境などが原因と考えられています。

強迫神経症の原因

強迫神経症の原因ははっきりと解明されていません。しかし、以下のようなことが関係すると考えられています。

  • セロトニンの不足
  • 遺伝的要因
  • 養育者の態度

それぞれ解説します。

セロトニンの不足

強迫神経症を引き起こす要因の一つとして、セロトニンの減少があります。

セロトニンとは?
脳の神経と神経の間に存在する情報を伝達する物質のことで、安心や不安をコントロールするのが役割

 

セロトニンが不足すると、不安や衝動を制御する機能が低下するため、強迫神経症の症状が引き起こされると考えられています。

セロトニンが減少する原因は、運動不足や不規則な生活、食生活の乱れなど。強迫神経症を予防するには、規則正しい生活習慣を心がけることも大切です。

遺伝的要因

強迫神経症を引き起こす要因として、家族間の遺伝が関係すると考えられています。実際に両親が強迫神経症であると、子どもの発症リスクは約4倍になるという報告もあります。

ただし、研究によって結果は異なり、遺伝の影響がどの程度かはっきりしていない現状です。両親のどちらかが強迫神経症であるからと、必ずしも発症するわけではありません。

養育態度や生活習慣、考え方、行動パターンなどに影響されて、発症する可能性もあるためです。

養育者の態度

強迫神経症の発症は、幼少期の養育者の態度が関係すると考えられています。実際に日本パーソナリティ心理学会の中国人大学生における強迫傾向と親の養育態度では、強迫神経症の患者様と養育者との関係性について、以下のように記載しています。

  • 暖かく良好な関係ではなかった
  • 過保護・過干渉であった
  • 共感性が乏しい養育態度であった
  • 関心がなかった

「情緒的な暖かさ」と「厳格な統制」を評価する調査では、強迫神経症の患者様の養育者は「情緒的な暖かさ」の点数は低く、「厳格な統制」を点数は高い点数が見られています。

(出典:日本パーソナリティ心理学会 中国人大学生における強迫傾向と親の養育態度

強迫神経症になりやすい人の特徴

強迫的性格のある人は、強迫神経症になりやすいとされています。強迫的性格とは、以下の通りです。

強迫的性格の例
・堅苦しい
・柔軟性や適応性に乏しい
・几帳面である
・秩序や規律を好む
・完璧主義である
・決断力に乏しい
・細かいことにこだわる

 

上記の特徴を持つ人はストレスを受けやすく、強迫神経症以外にもさまざまな心身症を発症するリスクがあるといわれています。

強迫神経症の発症が多い年齢

強迫神経症は年齢に関係なく、大人から子どもまで発症する可能性がありますが、特に青年期に発症することが多い病気です。

10代後半〜20代前半にかけて中等度から重症(日常生活に支障をきたす)の症状が現れると考えられています。

強迫神経症の症状

強迫神経症の症状を大別すると、考えたくもないことが頭に何度も浮かぶ「強迫観念」と、不安を消そうとする行為を何度も行う「強迫行為」の2つ。ここからは、それぞれの症状について解説します。

強迫観念|考えたくないことが頭に何度も浮かぶ

強迫観念は、繰り返し考えたくもないことが頭に浮かぶ症状です。

強迫観念の例
・手が汚れていると感じる
・汚いものを触ると体調を崩すと心配になる
・ドアを閉め忘れて泥棒が入るかもしれないと不安になる
・車の運転中に振動や音を感じると事故を起こしたのではないかと感じる
・「死」「悪」など縁起の悪いものを見ると悪いことが起きると不安になる

 

以上のような不安を打ち消そうとするために、強迫行為に至ってしまいます。

強迫行為|不安を消そうとする行為を何度も行う

強迫行為とは、強迫観念による考えやイメージによる不安を打ち消そうとする症状です。

強迫行為の例

・手が汚れていると思い何度も手を洗ってしまう
・部屋が汚れていると思い掃除が止められない
・閉め忘れていると思い何度も鍵やガスの元栓を確認する
・「悪」「死」など不吉な文字を見ると、良いイメージの字に置き換えなければならない

 

以上の症状に心当たりがある場合は、医療機関で相談だけでもしてみましょう。

 

強迫神経症のセルフチェック方法

強迫神経症の症状は誰もが普通にすること。受診の目安は、日常生活に支障をきたしているかどうかです。以下のように日常生活に影響が出ている場合は受診を検討しましょう。

日常生活や社会生活への影響

・戸締りやガスの元栓の確認、手洗いを繰り返し、約束や仕事に遅れてしまう
・手洗いに1時間、歯磨きに2時間など、生活に支障が出るほど行為を繰り返す

 

家族や周囲の人への影響

・戸締りやガスの元栓の確認、アルコール消毒などを周囲にも強要する
・きれいになったか確認してもらうため、シャワーなどに同席するよう求める

 

強迫神経症の治療方法

強迫神経症の治療方法には精神療法と薬物療法があります。ここでは、それぞれの治療方法の詳細を解説します。

精神療法

強迫神経症の治療には精神療法が用いられることが多いです。

精神療法とは?
コミュニケーションなど人間同士の交流を用いて、症状や苦痛などの改善を試みる治療法

 

特に効果的であるとされているのが、認知行動療法(ものの受け取り方や考え方を修正する精神療法)です。

認知行動療法の中でも曝露反応妨害法(ばくろはんのうぼうがいほう)が効果的であると考えられています。曝露反応妨害法は以下のように進みます。

  • 強迫観念が現れる状況にあえて自ら曝露する
  • 強迫観念が現れても不安を打ち消すための行為をとらない
  • 時間経過につれて不安が自然に収まることを繰り返し体験する

上記の方法を実施することで、これまでの不適切な考えや行為を修正していきます。

薬物療法

強迫神経症の薬物療法で主に使用される薬は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)です。選択的セロトニン再取り込み阻害薬の服用により、脳内でセロトニンが取り込まれるのを妨害し、セロトニンの濃度を高めます。

強迫神経症は、薬物療法と認知行動療法の組み合わせが効果的であるとされています。

強迫神経症の予後

強迫神経症は、約70%の患者様が認知行動療法や薬物療法により、治療効果を示しています。症状緩和の割合は、認知行動療法では60〜80%、薬物療法では40〜60%です。

しかし、認知行動療法も薬物療法も途中でやめてしまう患者様が一定数います。治療を効果的に進めるには、積極的に認知行動療法に参加することや薬を継続して飲むことが大切です。

強迫神経症の治療を妨げている原因

強迫神経症は、発症後15年ほど経過してから、初めて適切な治療を受けることが多いです。治療が遅くなってしまう原因は、以下のようなことが考えられます。

  • 恥ずかしさなどが原因で周囲に相談できない
  • 世間に認知されていない
  • 医師が適切な診断をできていない
  • 治療ができるところが近場にない
  • 治療を受ける金銭的余裕がない

強迫神経症は治療できる病気。一人で抱え込まず専門の医師に相談することが大切です。

周囲の人が強迫神経症になったときの対応方法

家族や周囲の人が強迫神経症の患者様をサポートするには、まず病気について学ぶことから始めましょう。病気について理解がないと、治療の妨げとなる関わりをしてしまう可能性があるためです。

例えば、以下のような関わり方は避ける必要があります。

  • 強迫行為に参加する
    …手洗いや戸締りの確認などを一緒にするなど
  • 強迫行為を助ける
    …戸締りやガスの元栓の確認を代わりにするなど
  • 強迫行為に加担する
    …手洗い用の石鹸や洗濯用洗剤をたくさん買い与えるなど

強迫神経症について理解できれば、患者様とどのように関わるべきかが理解できます。学習方法は「本を読む」「インターネットで調べる」などがあります。しかし、自己判断でその患者様に当てはめるのは難しいため、地域の精神保健福祉センターや専門の医師に相談してみることが大切です。

強迫神経症と併発しやすい病気

強迫神経症と併発しやすい病気は以下の通りです。

  • 不安障害
  • うつ病
  • 強迫性パーソナリティー障害

それぞれ解説します。

不安障害

不安障害とは、特定の状況において強い不安や恐怖を感じる病気です。強迫神経症も不安障害の一つで、他にも以下のような病気があります。

不安障害の例

・パニック障害
…急に理由もなく激しい不安を感じ、動悸やめまい、息苦しさを感じる

・社会不安障害
…人前に出て注目されることや、人の多いところにいると強く苦痛を感じる病気

・全般性不安障害
…学校や職場、家族など特定の対象に限らずさまざまなことに不安を感じる病気

 

うつ病

うつ病とは、悲しく憂うつな気分が1日中続く病気です。憂うつな気分により日常生活に支障をきたしている場合は、うつ病の可能性があります。

他にも以下のような症状があります。

  • 好きだったことに興味が湧かない、楽しくない
  • 疲れやすく、何に対してもやる気がでない
  • 自分に価値がないように感じる
  • 集中力がない、決断力がない
  • 死にたい、消えてしまいたいと感じる

うつ病の特徴は、朝は調子が良く午後からは改善してくる傾向があること。朝起きられず学校や仕事を休んだものの、午後からは調子がよく見えるため、周囲の人からするとサボっているように感じてしまうこともあります。

強迫性パーソナリティー障害

強迫性パーソナリティー障害とは、日常生活や仕事において、秩序や規則に対して強いこだわりをもち、本人や周囲に支障をきたす病気。具体的な症状は以下の通りです。

  • 提出する必要のある仕事において細部にこだわりすぎて納期が遅れる
  • 細部にミスがないか繰り返し確認して時間を有効活用できない
  • 最も重要な仕事が後回しになってしまう
  • 一つの仕事にとらわれすぎて他の生活がおろそかになる

強迫神経症に似ている病気ですが、思考や行動のパターンが異なります。

まとめ

強迫神経症は他の病気と混合されやすかったり、二次障害の併発があったりと、患者様の自己判断ではアプローチが難しい側面もあります。「周囲に相談するのは恥ずかしい」「周りが理解してくれない」などの理由で、適切な治療につながらないこともあるでしょう。

本記事で解説した症状やセルフチェック項目に当てはまる方は、不安が大きくなる前に福岡天神メンタルクリニックでぜひご相談ください。本院では、精神科専門医や公認心理士が、患者様ひとりずつのお話に耳を傾け解決に向けて寄り添います。

 

このコラムを執筆した人
吉沢仁

看護専門学校を卒業後、病棟看護師として従事。2021年からWebライターの活動を始め、現在は医療・健康分野を専門にしている。精神疾患や生活習慣病、小児疾患、代替医療などさまざまな分野で執筆経験がある。医療系の総執筆数は200本以上。医療系メディアでSEOライティングを中心に対応中。

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